モルタル外壁とサイディング外壁の違い

家の見た目を飾るビジュアルパーツとして、また雨風や塩害などから家を護る外壁。その素材として近年流行となっているのが、乾式工法で使われる外壁材・サイディングです。

モルタルなどを塗り込めて乾燥させる湿式工法は、通気性と吸湿性に優れた壁を作るための伝統的な工法でした。しかし、作業中の天候や職人の技量によって仕上がりにムラが生じやすく、乾燥のための時間がかかるといった難点もあります。

モルタル外壁

 

これに対し、工場生産された板状のボードを釘や金具で外壁下地に取り付けるのが、乾式工法で用いられるサイディングです。サイディングボードの外壁は湿式工法よりも耐候性に優れ、工場生産のため品質が安定しやすいのが特徴です。天候に左右されず、工期や費用が少なくて済むことから、今では外壁の約7割で使われている流行の工法です。

 

【サイディングの種類】
サイディングで用いられる板状の材質には、次のようなものがあります。

<窯業(ようぎょう)系>
セメントと繊維質を混ぜて作られたもので、耐震性と耐火性に優れます。レンガ調やタイル調などのデザインがあり、おしゃれな外観を楽しめる安価な素材です。

<金属系>
ガルバリウム鋼板を代表に、他にもステンレスやアルミニウムなどの非鉄金属で作られる、防水性や耐天候性が高い軽量素材です。表面のキズ・サビによる劣化が目立ちやすく、天井部分に用いると雨音などが響きやすくなってしまいます。

<木質系>
天然木材を活かした、暖かみのある自然派素材です。デザイン性と断熱性に優れる一方で、木材のため火に弱く、水を含んだまま放置すると腐食しやすいのが難点です。消防法により、都市部の密集地などでは使用できない場合もあります。

<樹脂系>
塩化ビニールで成形されたプラスチックの素材。耐天候性が高く塩害や凍害にも強いのが特徴で、アメリカでは主流となっている外壁材です。ただし日本では普及率が低く、施工可能な業者が少ないレア素材でもあります。

 

【材質によるデザインの違いが楽しめる】

サイディングボードの外観は、材質や加工によって様々なパターンのものが用意されています。窯業系サイディングは石造り風の外観が特徴で、ヨーロッパを意識したデザインやレトロ調の仕上げなどが可能です。素材そのものの重量もさることながら、見た目にも重みを感じるような存在感あふれるデザインが醍醐味と言えるでしょう。

モダンな建物にしたいなら、金属系サイディングが適しています。
メタリックな外観で落ち着きのある風合いを出せる素材であり、かつては倉庫や工場など工業系の大型建築物に使われてきた外壁材です。しかし近年では加工技術の発達によるデザイン性や、素材そのものの性質などの評価が高まっており、一般住宅においてもシェアを伸ばしつつあります。

木質系サイディングの外観は、他とは明らかに一線を画す性質のものです。ログハウスや山小屋のようなナチュラルテイストをふんだんに取り入れ、自然に回帰するかのような安心感を生み出す非常に優れた素材と言えるでしょう。

最近は耐火性能を高めた木質系ボードも出回っているため、都市部でも見かけることが多くなっています。また、素材の木目を活かすため二つと同じデザインのものがなく、オリジナリティーに富んだ外観を得られるのも大きなポイントです。

国内ではまだあまり見かけない樹脂系サイディングですが、元々はアメリカで開発・製造が始まった外壁材で、プラスチックの特徴を活かしたデザインの多様性が楽しめます。素材となる塩ビ(塩化ビニール)樹脂は、おもに水道関係の機材や部品などに利用されているごく一般的なもので、着色パターンによって様々なカラーバリエーションを実現可能な素材です。その耐水性・耐天候性の高さから、日本でも寒冷地をメインに需要が広がりつつあるので、実物のサンプルを見たいなら北海道などがおすすめのスポットになるでしょう。

 

【サイディング外壁のメンテナンス】

どんな家でも、長く快適に住み続けるためにはメンテナンスが欠かせません。

サイディング外壁の主な劣化は、まず継ぎ目部分のシーリング材から始まります。

サイディングボードのサイズは、一般的なもので455×3030mmといった細長のものなので、板の継ぎ目を埋めるための防水シーリングが必要になります。このシーリング材の耐用年数は7年前後とされており、これが剥がれるなど劣化を起こすことで、隙間からの浸水が発生しやすくなるのです。また、表面保護のための塗装も年月により劣化するので注意が必要です。おもに木質系以外のサイディングは、工場生産時にコーティングが施された状態で出荷されます。これが使用年数によって剥がれることで表面の保護力を失い、サイディング素地そのものへのダメージに繋がるのです。

外壁を手で触って白い粉が付着するようなら、それはコーティングが寿命を迎えたサインなので、再塗装のケアを考える時期と言えるでしょう。ボードの反りや変形といった形状劣化も、長い年月を経たサイディングにはつきもののトラブルです。

素材の違いによるメンテナンス性への影響も、併せて考慮しなければなりません。窯業系・木質系は水を吸いやすく、防水加工の有無により湿気の度合いが大きく変わってくるのがデメリットです。

水気を長く含んだまま放置するとカビや腐食の原因になります。金属系は熱を吸収しやすいため、高温状態が長く続くと耐久性に影響し、キズ付きやすくなったり色褪せたりなどの劣化が目立つようになります。金属の性質上、サビ対策が必須となるのは言うまでもありません。

樹脂系は品質劣化にもっとも強いと言われていますが、豊富なカラーバリエーションと引き換えにデザインパターンの少なさが泣き所です。そのため他のサイディング材と比較して、耐久メンテナンスのコストや手間は少ない半面、見た目のマンネリ感を持ちやすい素材です。

塗装による色変えや外壁リフォームなど、耐久性よりもデザイン性の観点からメンテナンスが必要となるかも知れません。