サイディングの特徴とメンテナンス方法

建築や建材に詳しい方でないと、外壁にどのような種類があるのかまでは分かりませんね。また、住宅を建てるときにも、全くのオーダーメイドでない限り、カタログの中から外壁の模様やカラーなどを選ぶ程度で、使用する建材の種類までは指定しないのが一般的です。
住宅メーカーで使用されているものに「サイディング」があり、多くの住宅で利用されている一般的な外壁建材の1つでもあります。
外壁は、屋根と同様に常に外気にさらされているため、築年数が増えるごとに劣化していきます。
そこで今回は、このサイディングという建材について、その特徴や耐用年数、メンテナンス時期とその方法など詳しくご説明していきます。
戸建ての住まい

◆サイディングの特徴と魅力
「サイディング」とは住宅の外壁建材の1つで、セメントと繊維を混ぜ合わせた大きな板状になっていることから「サイディングボード」とも呼ばれています。
外壁の施工方法には、「湿式(しっしき)方法」と「乾式(かんしき)方法」の2種類があり、漆喰などを使った塗り壁やタイル貼りの壁は湿式方法となり、サイディングは乾式方法となります。
塗り壁やタイル貼りでは、時間がかかるほか職人の技が重要なポイントとなります。一方、サイディングでは、あらかじめ工場で壁のサイズに合わせてカットするため、簡単かつスピーディーに貼り付けられ、施工に特別な技術は必要ありません。
サイディング同士をつなぐのはシーリング材を使います。シーリング材とは、合成樹脂や合成ゴムなどからできたペースト状の建築用接着剤のことで、これを使うことで気密性が高まるほか、密着性が高いため水漏れ予防にもなります。
サイディングの魅力としては、「施工時間が短時間」・「材料費・施工費用の安価」・「耐火性がある」・「汚れに強い」・「軽量」・「耐久性も高い」などがあります。
漆喰などの塗り壁は、自然な材料を使っているため安心に暮らすことができますが、サイディングよりも時間や施工費用がかかるほか、外壁として利用するとひび割れ(クラック)などを起こす場合があります。
ひび割れをそのままにしておくと、そこから雨水が侵入して木材を傷めることにつながります。そのため、頻繁にメンテナンスをしなくてはいけないのです。
しかし、サイディングはひび割れを起こすことはほとんどないので、住宅への悪影響も少ないです。

◆サイディングの種類
サイディングには、主に「窯業(ようぎょう)系サイディング」・「樹脂系サイディング」・「木質系サイディング」・「金属系サイディング」の4種類があり、それぞれ特徴や特質が違います。
ここで、この4つの種類の違いについて比較してみましょう。
比較する際には、それぞれの種類を9つの観点(①耐久性・②耐火性・③耐傷性・④断熱性・⑤防汚性・⑥防水性・⑦遮音性・⑧施工性・⑨色合い)に分けてランク付けします。(A:大変優れている、B:優れている、C:適している、D:適さない)
*窯業系サイディング
①耐久性:B、②耐火性:B、③耐傷性:B、④断熱性:B、⑤防汚性:A、⑥防水性:A、⑦遮音性:A、⑧施工性:B、⑨色合い:B
※窯業系は、セメント質と繊維質が主な原料に使われています。安定した耐久性を持っていることから、一般住宅の外壁資材として約7割のシェアを誇っています。
*樹脂系サイディング
①耐久性:A、②耐火性:C、③耐傷性:B、④断熱性:C、⑤防汚性:B、⑥防水性:A、⑦遮音性:C、⑧施工性:A、⑨色合い:A
※樹脂系は、天然木材に塗装を施し、表面を炭化処理したものです。耐久性は大変優れていますが、ほかのポイントにおいてやや性能が落ちます。
*木質系サイディング
①耐久性:B、②耐火性:C、③耐傷性:B、④断熱性:B、⑤防汚性:C、⑥防水性:B、⑦遮音性:B、⑧施工性:B、⑨色合い:B
※木質系は、塩化ビニル樹脂が原料に使われています。塩害にも強く冷害にも強いことから、北海道や東北地方でシェアが広がっています。弾力性があるため衝撃などに強いですが、耐火性にやや心配があります。
*金属系サイディング
①耐久性:A、②耐火性:C、③耐傷性:B、④断熱性:A、⑤防汚性:A、⑥防水性:A、⑦遮音性:B、⑧施工性:A、⑨色合い:B
※金属系は、スチール・アルミ・ステンレスの3タイプがあります。対候性・耐久性に大変優れています。

◆サイディングの耐用年数とメンテナンス時期
サイディングの中には、耐久性や耐候性に優れている種類もありますが、決して劣化しないわけではありません。
同じサイディングを使用した住宅でも、住んでいる地域や気候などによってその耐久年数は違ってきます。
一般的には、新築から約5年~7年経過した頃から、徐々に劣化が始まってくるといわれています。
特に、サイディング同士をつなぐシーリング材が劣化しはじめ、弾力性がなくなってひび割れなどが生じてきます。他にも、サイディングが反り返ってきたり、チョーキング(サイディングの表面加工が剥がれてチョークのような粉がつく)が起こることもあります。
そのため、サイディングの種類に関係なく「新築から7年~8年」経過したら、メンテナンスを行うようにしましょう。

◆サイディングのメンテナンス方法と費用
サイディングのメンテナンス方法としては、主に「シーリングメンテナンス」・「貼り替えメンテナンス」・「塗り替えメンテナンス」の3つの方法があり、劣化の状態に応じて方法が決まります。
ここで、3つのメンテナンス方法の違いと、費用相場をご紹介します。
*シーリングメンテナンス
サイディング自体には交換が必要となるほど劣化が見られないが、シーリング部分に劣化(シーリング材が痩せてきている・ひび割れている・破断しているなど)がある場合に、打ち替えをする方法です。
劣化した古いシーリング材を全て撤去し、新たにシーリング材を充填していきます。
メンテナンス費用は、延べ床面積や施工業者などによって多少の差がありますが、30坪の住宅で約20万円~45万円です。
*塗り替えメンテナンス
サイディングの表面には防水加工などが施されていますが、紫外線などのダメージを受け続けていると、徐々に加工が剥がれてきてむき出し状態になっていきます。
こうなると、雨が降った際にサイディングが水分を吸収してしまい、反り返りの原因を作り出します。(反り返りは、水分の吸収・乾燥を何度も繰り返すことで起こります)
特に、チョーキングや色褪せ、塗装の剥がれが目立つようになったら、塗り替えメンテナンスをおすすめします。
メンテナンス費用としては、延べ床面積30坪・シリコン塗料で70万円~150万円です。ちなみに、シリコン塗料の耐久年数は約7年~10年です。
*貼り替えメンテナンス
一度目のメンテナンスでは大丈夫であっても、二度目以降ではサイディング自体のメンテナンスも必要となってきます。特に、サイディングにひび割れ、浮き・反りなどの症状が出ている場合には、貼り替えメンテナンスを行います。
貼り替えでは、古くなったサイディングを全て取り外し、新しいサイディングに替えます。外壁全体に施すので、以前のものとは違う柄やカラーに変更することも可能で、自宅の印象をガラッと変えることもできます。
メンテナンス費用としては、延べ床面積36坪の住宅で200万円~となっています。

◆まとめ
サイディングの耐久性は、時代とともにアップしてきていますが、劣化しないわけではありません。
特に、サイディング自体が耐久性に優れていたとしても、それらをつなぐシーリングに劣化が出てくることもあります。
メンテナンスに限ったことではありませんが、私たちは何か症状が起こった後で対処を行う傾向にあります。これでは、遅すぎる場合もあるのです。
外壁は家を守る大切な部分であり、症状に気づいたときには他の部分にも悪影響が起こっていることも否定できません。
そのため、今トラブルが起こっていなくても、家を建ててから7年ほど経過したら定期的なメンテナンスを行っていくようにしましょう。